フィクションを読むと共感力が高まる

 

フィクションを読むと共感力が高まるという研究結果を発表した研究グループがありました。

The function of fiction is the abstraction and simulation of social experience

RA Mar, K Oatley Perspectives on psychological science 3 (3), 173-192

 

抄録にはこうあります。

フィクションは、元々娯楽を目的としているため、心理学の研究対象にはなりませんでした。私たちは、文学的な物語にはもっと重要な目的があるとみています。フィクションは、物事を抽象化や単純化、簡略化をしながら現実社会をモデル化し、シミュレーションした状況を提示します。物語小説はまた、読者が社会的に相互作用した模擬体験を生み出してくれます。このシミュレーションは、社会情報のコミュニケーションと理解を促進し、より説得力のあるものにし、経験を通じて学習効果を高めます。フィクション文学を模擬体験することは、自分自身とは異なる他人の理解を促進し、共感と社会的推論の能力を高めることができます。

 

簡単に言ってしまえば「フィクションを読む人は他人の気持ちに敏感になる」「フィクションの読書量が多いほど共感力が高い」ということです。

彼らのチームは、具体的にこんな実験を行いました。

成人252人を対象とした実験で、年齢、性別、IQ、英語力、ストレスの高さ、孤独か否か、性格のタイプを分析しました。共感力については「目から心を読み取るテスト(RMET)」で評価したのだそうです。

そこから導き出された結論が、前述した通りの「フィクションと共感力の関係」となったわけです。

さらに別の研究では、本のジャンルによって違いはあるのかという疑問にも答えています。例えば、フィクションとノンフィクションとの違いです。

興味深かったのは、ノンフィクションは共感力を高めなかっただけでなく、孤独感やストレスを感じることが多かったのだそうです。(特に男性)

そう言えば、就寝前の読書にノンフィクションはおすすめしないという方は多いですね。

ノンフィクションを読むと、先のことばかりを考えてしまうようになるからでしょうか。