その日を大切にすること

 

その日を大切に過ごしたいというのは、頭ではわかっていても、自信を持ってイエスと答えられるかどうかは(少なくとも私自身は)疑問です。

ところが、最近「歳時記」をかじるようになって、日本人が季節をon goingに感じとり、その変化の推移を重んじながら、1日1日を大切に生きてきたのだということが少しわかったような気がしています。

俳句は、今、その時のことを詠むのが普通です。

今は夏ですから、夏のことを詠むのが基本です。終わってしまった季節のことを詠もうと思えば、巡ってくる次の季節まで待つ必要があります。

俳句は写真に喩えられますが、その時の旬の素材を句に写しとるのだと思えば自然なことです。カメラを向けて撮影できるのは「今」のものしかありませんから。

夏には夏のこと、次の秋には秋のこと。初心者の私なら、やや勇み足でちょっと先取りするぐらいがちょうど良い気がします。

では、夏はいつ始まるのかというと、それは「立夏」からです。梅雨入りのように担当部署が気象データをもとに宣言を出すものではありません。

歳時記には「立夏」の解説にこうあります。

「二十四節気の一つで、新暦5月5日ごろにあたる。暦の上ではこの日から夏が始まる。活気に満ちた季節の到来を感じさせる。」(俳句歳時記)

「二十四節気の一つで、太陽の黄経が四十五度の時である。陽暦5月6日頃にあたり、ゴールデンウィークの最後を締め括る頃でもある。日本列島は南北に長いため、暦の上では夏になっても北方の地域では桜がやっと開いたばかり、というように、地域により、夏の到来を実感する時期に大きな隔たりがある。しかし「暦の上だけかもしれないが、とにもかくにも夏になった」と自覚することは、感覚を研ぎ澄まして季節を先取りする俳句において、非常に有効と思われる。(櫂未知子)」(大歳時記)

ちなみに二十四節気とは、1年を春夏秋冬の4つの季節に分け、さらにそれぞれを6つに分けたものです。単純に考えれば、だいたい約15日毎に次の節気がやってくる計算になります。

今年は、5月5日に「立夏」がありました。その16日後の5月21日に「小満」がありました。

このほぼ15日毎のサイクルというのは、季節の推移を感じ取るのにちょうど良いのでしょう。

変化を感じとるということは、そこにある状況が刹那のものであり、かけがえのないものであると実感することです。

そして、ボーッと過ごしていたらあっという間に過ぎ去ってしまうものです。

私が歳時記を面白いと思うのは、季節の移ろいを観察し続けた先人たちの知恵が記されているからです。

 

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