どなたかのレビューにあったように、「読んでいるそばから運動したくなる」本でした。
ただし、「第3章 集団的な喜び」については、「集団運動・行動による絆の形成」などのトピックが言及されており、比較的ひとりの活動を好む(集団が苦手な?)私にはちょっと苦手な分野もありました。
特に興味深かったのは「第1章 持久力が高揚感をもたらす」の「なぜ『ランナーズハイ』が起こるのか?」です。
ここでは、アリゾナ大学の人類学者、デイヴィッド・ライクレンの研究について紹介しています。
まとめるとこんな感じです。
人間は「ストレス」を「報酬系」へと置き換える機構を持っている。
運動については、「ランナーズハイ」と呼ばれる反応、つまり運動による多幸感が起こる。
ランナーズハイの原因物質は古くからβエンドルフィンと呼ばれる物質であるとされてきたが、近年の動物実験の結果から, 内因性カンナビノイドの変化のほうがより強く影響することが明らかとなっている。
ライクレインは、内因性カンナビノイドの血中濃度が上昇するためには、運動を「どの強度で」「どれくらいの時間」行えば良いのかを探ってみた。
そして、ランナーズハイを引き起こすカギは、走る行為そのものではなく、中強度の運動を継続することだということをつきとめた。
つまり、自分にとってややきつい運動を20分間続けること、持久力を発揮することが内因性カンナビノイドを増加させることにつながるのだ。
着眼点が面白いと思いました。スタートの着想はこうです。
「ランナーズハイは、持久力を発揮すると報酬が得られる仕組みになっているのでは?人類の進化の過程において、持久性運動によって満足感を得られるようになったということではないか?」
確かに満足感がなく、ただきついだけならば、走ろうとは思わないはずです。
むしろカロリーを消費するだけの行為は、極力避けていたように思います。
食べ物にありつけるか不明なのに、カロリーが枯渇するまで走り続けるというのは、生命の危険でもあり、愚の骨頂です。
やはり、それに見合うだけの報酬があったと考えるのが妥当であるでしょう。
ランナーズハイを経験するには、心拍数をあげるような運動を20分間続けてみること。
この指標は、運動をする際の参考になると思いました。