徐々に生まれる

 

 

「星の王子さま」や「夜間飛行」で知られるサン・テグジュペリの次の言葉が好きです。

彼の小説「戦う操縦士」に出てくる言葉です。

「生きるとは、時間をかけて徐々に生まれ出ることだ。」

ヒーローのように「変身!」のかけ声で、いきなり改造人間になって解決!というわけにはいきません。

現実は、1日1日の積み重ねで自分自身が形成されていくものです。

実際、この「生きるとは」の文は、次の言葉の後に続きます。

「どのような状況に置かれたところで、それまでまったく考えもしなかった異質な人間がわれわれの内に目覚めることなどない。」

そして、こんな言葉が続きます。

「あらかじめ完成している魂を、その場に応じて適宜借用することができたりしたら、それはいささか安直すぎるというものだろう。

ときには、突然の天啓によって運命が大きく変わったように思うこともある。しかし天啓というのは、それまでにゆっくりと準備されていた道が、《精神》のはたらきによって、突然見えるようになったということにほかならない。」

心がけの一つひとつ、その時々の行為が、その人自身をつくりあげていく。

それが「徐々に生まれる」「ゆっくりと準備される」ということなのだと思います。