詩「窓の下」

 

詩人 高田敏子さんの作品を読むと、懐かしい気持ちで心が満たされます。

自分が小学生の頃の空気感を、勝手に重ね合わせて共感しまくるのです。

「懐かしい」のは、その描写に体験を重ねながら、自分が子どもの頃の感覚を思い出しているからです。

日常の場面の切り抜きですが、作品の中の「私」と、実際の「私」は、いつかどこかで同じ経験をしています。

例えば、子どもの頃、風邪をひいて昼間から奥の部屋で横になって休んでいた時、遠くから聞こえる子ども達のはしゃぐ声。それを聞くと、妙に静かな気持ちになって安心したものです。

日常の暮らしの音というのは、どうしてこう落ち着くのでしょう。

 

 

下に「窓の下」という詩を紹介します。

 

 

窓の下

  

高田敏子

 

窓の下を通り

次の窓の下を行きながら

私は聞いている

食器の触れあう音や

刻む音 水を流す音

その合間に聞こえる 声 声

  

窓の中の人は

気づかない

自分たちのたてる音が

道ゆく人の耳に伝えている

あたたかさ やさしさを

たとえそれが子供を叱る声であっても