日本には、昔から「アマビエ」のように大異変を予言したり疫病退散の力を発揮する妖怪や予言獣と言われるものがいくつか存在しています。
肥前国の「神社姫」や平戸の「姫魚」。アマビエと同類と考えられている「アマビコ」など。
そして、牛の体と人間の顔をもつ「くだん」
下の図はWikipediaからで天保7年の瓦版が伝えた丹後国倉橋山のくだんです。
この妖怪は、小松左京の小説にも出てきます。
「それがくだんだったのだ。くだんは件と書く。人牛を一つにしてくだんと読ませるのだ。くだんは時々生まれることがある。(中略)くだんには、予言の能力があるのだった―」(「くだんのはは」より)
この小説に出てくる「くだん」は、女性の体と牛の頭部をもつ姿をしていました。
くだんの姿は、古くは牛の体と人間の顔とされていますが、第二次世界大戦後には顔と体が逆パターンも登場していたようです。
戦争が舞台の「くだんのはは」では、体つきは十三、四の女の子で、顔が牛の姿をしていました。
伝承では「くだんは生まれてすぐ死ぬが、死ぬときに必ず何か予言し、その災害を逃れる方法を教える」とされています。
アマビエもそうでしたが、遠い昔から、予言の妖怪たちは世の中が危機的状況になると古い記憶から呼び起こされて、蘇ってきます。
そして、人々の心の拠り所として夢を見させてくれます。
水木しげる先生がご存命なら、このコロナ禍の中で、アマビエだけでなく「くだん」や他の予言の妖怪たちを探り当てていたかも知れません。