「迷うことが好きだ」

 

パパっと決めて、ササっと済ませてしまう人は、確かに颯爽としています。

いつまでも決めきれないと自分で自分に「優柔不断」の烙印を押してしまいがちになるので、自己嫌悪に陥ってしまうものです。

でも、迷わない人生なんてあるわけがないし、迷って決めたからこそ価値を再確認できたということもあるはずです。

そして、次の岸田衿子さんの詩。(詩集「あかるい日の歌」より)

これこそ「そうだよなあ」と気持ちが明るくなりました。

もちろん岸田さんにお会いしたことはありませんが、お友達になりたいと思いました。

 

 

『アランブラ宮の壁の』 

 岸田衿子

アランブラ宮の壁の

いりくんだ つるくさのように

わたしは 迷うことが好きだ

出口から入って 入り口をさがすことも

 

 

アランブラ宮の壁がどんな壁なのかわかりませんが、きっと古いそびえたつような石造建築物の高い壁で、その石肌を覆い隠すようにつる草が這っているのでしょう。

きっとどこがスタート・ポイントなのかはっきりしないほどの迷路模様を描いているはずです。

 

「わたしは 迷うことが好きだ」

 

この断定の仕方が、あまりに潔(いさぎよ)すぎて惚れ惚れします。

出口と入口が逆になるぐらいの迷い具合ですが、好きだから良いのです。

「これでいいのだ」

そう宣言しているように聞こえます。