「これでいいのだ」

 

赤塚不二夫さんのギャグ漫画を無性に読みたくなる時があります。

赤塚不二夫さんのギャグの質は今読んでも特殊な気がします。事態がどんどんエスカレートしていく感じや、がっけぷちでも突っ込んでいくようなエネルギーはリミッターがはずれていますし、登場人物の誰もが長生きなど望まず、短命だけれども命を燃焼しつくすようなすごみがあります。

「自分が一番最低だと思ってりゃいいんだ。」「自分が一番バカになればいい」

赤塚不二夫さんの言葉は、世の中のあらゆることを受け入れる覚悟に満ちています。

バカボンのパパの名セリフである「これでいいのだ」を、ニーチェの哲学と相通じるものとして解釈する向きもありました。

「運命から逃げずに、それを受け入れ、そして乗り越えよ」と。

タモリさんが赤塚不二夫さんの葬儀の際に述べた弔辞に、「これでいいのだ」の本質を見事に表現していました。

「あなたの考えは、すべての出来事、存在をあるがままに前向きに肯定し、受け入れることです。それによって人間は、重苦しい意味の世界から解放され、軽やかになり、また時間は前後関係を絶ちはなたれて、その時その場が異様に明るく感じられます。この考えをあなたは見事にひとことで言い表してます。すなわち、「これでいいのだ」と。」

今の世の中だからなおのこと、赤塚不二夫さんの「これでいいのだ」という言葉が心に沁みます。