カタツムリの歩み

私が中学の頃の修学旅行は、九州を周回するコースでした。

今の学生さん達には想像もつかないでしょうが、沖縄から最初の目的地の長崎までは海路でした。みんなでフェリーで一泊して、朝になるのを待って甲板に上ったのを覚えています。

 

長崎では、長崎平和公園で平和学習を経験しました。

そこでは、教科書などでよく目にしていた「平和祈念像」の前で、みんなで整列している光景を覚えています。

今なら誰がその像をつくったとか、長崎との関係を調べたりするのでしょうが、当時の私はやはり子どもで、かなり浮かれていたのだと思います。

 

最近、長崎のことに触れる機会があったので、改めて調べてみました。

平和祈念像は、北村西望氏によるもの。像の天に向けて垂直にあげた右手は原爆の脅威を、水平にのばした左手は平和を表しているのだそうです。

北村西望氏は、102歳まで生きた長命の方で、晩年まで創作されていたというのですから、この方も鉄人です。

 

北村氏が詠んだ有名な俳句があります。

 

たゆまざる 歩みおそろし カタツムリ

 

歩みは遅いけれども休むことなく継続し、結果的に遠くの地まで到達してしまうカタツムリに畏怖の念を抱いていたのだそうです。

「私は人の5倍も10倍もかけて仕事をする」という言葉に、北村氏のたゆまざる努力が滲み出ているように思います。

 

長崎平和公園・平和祈念像