今日は「ブッダのことば(スッタニパータ)」中村元訳からの紹介です。
「第二 小なる章」の「四、こよなき幸せ」の一節です。
あるときブッダは、容色麗しい神に質問を受けた。
「多くの神々と人間とは、希望を望み、幸せを思っています。最上の幸福を説いてください。」
その後に続く259から268の10個の偈は、この呼びかけに応えたもの、269の1個の偈はその総括です。(どの偈にも文末に「―これがこよなき幸せである」という文がつきますが、あえて削っています。)
諸々の愚者に親しまないで、諸々の賢者に親しみ、尊敬すべき人々を尊敬すること。
適当な場所に住み、あらかじめ功徳を積んでいて、みずからは正しい請願を起こしていること。
深い学識があり、技術を身につけ、身をつつしむことをよく学び、ことばがみごとであること。
父母につかえること。妻子を愛し護ること、仕事に秩序あり混乱せぬこと。
施与と理法にかなった行いと、親族を愛し護ることと、非難を受けない行為。
悪をやめ、悪を離れ、飲酒をつつしみ、徳行をゆるがせにしないこと。
尊敬と謙遜と満足と感謝と(適当な)時に教えを聞くこと。
耐え忍ぶこと、ことばのやさしいこと、諸々の〈道の人〉に会うこと、適当な時に理法についての教えを聞くこと。
修養と、清らかな行いと、聖なる真理を見ること、安らぎ(ニルヴァーナ)を体得すること。
世俗のことがらに触れても、その人の心が動揺せず、憂いなく、汚れを離れ、安穏であること。
これらのことを行うならば、いかなることに関しても敗れることがない。あらゆることについて幸福に達する。
著者の中村元は解説でこう述べています。
「私たちはどのように生きたらいいのか、ということを教えてくれるものが仏教であるが、では仏教は私たちにとって〈幸福〉とはどんなものだと教えているのであろうか。この短い一節は、〈人生の幸福とは何か〉をまとめて述べている。いわば釈尊の幸福論である。」
「ここに述べられている幸福論は、必ずしも体系的とはいえない。原文は詩句のため韻律の関係もあり、論理的に筋道立てて述べられているわけではない。ただ、幸福に喜び満ちあふれている心境がつぎからつぎへとほとばしっている。その喜びの気持ち ―それは現在の私たちのものでもあるといえる。」
これらの「幸福論」に目標を定めて、暮らしていきたいものです。