迷言のなかの真実

娘が「偉い人は偉そうにしてほしい」と漏らしていました。

腰が低く、人当たりの良いオジサンだと思っていたら、実は後からあの人は偉い人だったということを知らされて、変な汗をかいたという経験を何度かしているのだそうです。

「失礼なことをしてなかったか、ドキドキよ。オーラまで消してしまうんだから」

いやいや、相手をみて態度を左右してしまうのが悪いでしょと思いましたが、私もかつて師匠の先生が実直で素朴な雰囲気の方だったので、お供をさせていただくたびに「この方はホントに偉い方なんですよ」と周りに宣伝して回りたいぐらいだったのを思い出しました。

そんな時は「師匠、もっと偉ぶってください!」と心の中で苦笑いしていたものです。

菜根譚にこんな言葉があります。

 

醲肥辛甘非真味

真味只是淡

神奇卓異非至人

至人只是常

 

意訳:

濃い酒や脂の肉、辛いもの、甘いものは、真の美味しさではない。真の味は淡白なものである。同様に、人並みはずれた天才は道を修める人間ではなく、道を修める人間は平凡な人間である。

 

つまり、できた人間ほど、偉ぶらないで淡々としているのだということです。

 

それはわかりますが、でも娘の気持ちもわかるなあ。

若い時は自分が未熟な分だけ、せめて失礼をはたらきたくないと思っているものですからね。

「偉い人は偉そうにしてほしい」

これって、間違いなく迷言ですが、わりと真実かも知れません。