文章が上手な人の職業というのは「見る、見つめる」職業の人だということを聞いたことがあります。
画家しかり。
グラフィックデザイナーの横尾忠則さんも、小説「ぶるうらんど」や、Twitterの文章をそのまま本にした「ツイッター、その雑念のゴミばこ」などを読むと、その文章は読みやすく、わかりやすく、気持ちの良い文章を書くものだと感心します。
「昆虫記」を著したファーブルも昆虫の観察をする博物学者で、見つめる人です。
生前はノーベル文学賞の候補にあがるほどに文学者としても評価されていたそうですから、この「見つめる人」=「良い文章を書く」の法則は、かなりの確率で当たっているのではないかと思います。
そして、この本「ラジオからビートルズが流れていた」
ビートルズが来日した時、熱狂の103時間を日本人として唯一密着を許されたカメラマン・浅井愼平さんの書物です。(フォトエッセイというのでしょうか)
例えば、緑とオレンジ・ピンクのコントラストが鮮やかな魚の置物の写真に添えられた言葉。
映画をストーリーで観ません。
シーンの連続として観ています。
人生はシーンですから。
私のお気に入りなのは、透明なガラスの空き瓶が白い砂地に三分の一ほど沈み、その横に貝殻と木の葉が添えられた写真とともにある言葉
使わない言葉を
どれだけ持っているかが
詩人の条件。
医者も「診る人」なので、少しは具合の良い文章を書けるかと思うのですが、私の場合はどうもうまくいかないようです。