宮本武蔵著「五輪書」の「地の巻」に兵法の心がけを九箇条に掲げています。
第一に、よこしまなき事を思ふ所、
第二に、道の鍛錬する所、
第三に、諸芸にさはる所、
第四に、諸職の道を知る事、
第五に、物毎の損得をわきまゆる事、
第六に、諸事目利を仕覚ゆる事、
第七に、目に見えぬ所をさとつてしる事、
第八に、わづかなる事にも気を付くる事
第九に、役にたゝぬ事をせざる事
その他にも「兵法三十箇条」などもありますが、この「九箇条」はすっきりしています。
特に最後の「役に立たないことはしない」という言葉が目につきました。
修行する者の心構えを説いたものですが、道を極めた者の説得力があります。
最近、私は吉川英治著 小説「宮本武蔵」をオーディオブックで聞き流しているのですが、その荒々しい武蔵と似ても似つかない思想家としての武蔵の姿がこの「五輪書」では浮かび上がってきます。
兵法家であり「生き方」を説く武蔵は、多くの文芸や職能の人物たちと交流を持ち、広い視野に立っていたのだと感心します。