河合隼雄さんのエッセイに面白いお話がありました。
要約して紹介します。
あるところに立派な長老がいた。長老のありがたい教えを乞うために弟子たちが多く集まっていた。
あるとき、長老が「吠える犬は怖くない」と話された。よく吠える犬はもともと臆病なので、決して噛みついたりしないので怖がることはないと言う。弟子たちはさすがに長老だと感心した。
あるとき、突然に大きな犬がワンワンと吠えかかってきた。
弟子たちは恐ろしかったが、長老の教えを思い出して平静を保とうとした。
ところが、長老は弟子たちを置いて、一目散に逃げてしまった。弟子たちもびっくりして一緒になって必死に逃げた。
逃げおおせた後で、弟子の一人が長老に「どうして逃げたのですか?」と尋ねた。
すると長老は「吠える犬が噛みつかぬことは知っているし、君たちもよくよく聞いている。しかし、ひょっとして、あの犬が私の教えを知らないのではないか、と思うと不安になったので、逃げたのだ」と言われた。
オチがよく効いたお話です。
こういうお茶目な長老だから、その人柄に弟子たちに慕われているのでしょう。
まるで落語に出てくるようなキャラですね。