「ムーミン谷の仲間たち」は、スナフキンのセリフがカッコよくキマッています。
たとえば「春のしらべ」の章。
スナフキンは森の中を歩いていました。お日さまが沈み、歌のしらべが降りてくるのをひとりだけになって楽しみに待ち構えていたのです。
しかし、そこに1匹のはい虫が現れました。スナフキンの動きをじっと注目し、その所作にいちいち感心し、有名人あつかいしたあげく、興奮して話しかけてきました。
スナフキンの歌は、それでもうだめになりました。その夜は、ひとりだけでなくなったので、すっかり変わってしまったのです。
そこで、スナフキンがはい虫に言う言葉。
おまえさん、あんまりおまえさんがだれかを崇拝したら、ほんとの自由はえられないんだぜ。ぼく、よく知ってるがね。
スナフキンが感じる煩わしさは、彼が孤独を愛しているだけではないと思います。
過度の崇拝は、妄信となります。自分で思考することを、放棄してしまいます。
自分で考えて行動し、失敗もする。失敗するからこそ成長もするのです。
それがスナフキンのいう「ほんとの自由」なのでしょう。