人はみな厳しい闘い

 

平易な言葉で表された言葉で、私が気に入っているものがあります。

 親切にしなさい。

 あなたが会う人はみんな、厳しい闘いをしているのだから。

哲学者プラトンの言葉だそうです。

 

糖尿病や脂質異常症など、その人の生活習慣の改善がどうしても必要な疾患があります。

もちろん、わずかな薬物療法が有効な人もいますが、多くは食事+運動療法との三本柱です。

 

通常、外来では血液検査を行い、検査結果が数値として出てきます。

血液検査をしていなくても、血圧や体重を測定すると、やはりその結果は数値で出てきます。

このように、結果が数値で出るのが指標になって良い面と、まるで学生時代の試験の点数みたいに「良し悪し」の判断だけになってしまって、マズい面があります。

どんな時もそうですが、私たちが陥りやすいのは、数値だけでその人の状況を全て理解したかのように判断してしまうことです。

前回の検査よりも数値の異常値が増していたら「ダメ」。正常値だったら「頑張った」

決めつけが強いと、簡単に「薬を増やしましょう」という提案をしがちになります。

けれども、よく伺うと、やむにやまれぬ事情がいくつも横たわっていたことに気づかされるのです。

 

「あなたが会う人はみんな、厳しい闘いをしている」

これは、私が研修医の時に先輩から教わった心得に、とてもよく似ています。