「希望の糸」

 

娘は東野圭吾さんの大ファンで、ほとんどのシリーズを読破しているようです。

自宅に、多くの東野作品が無造作に置かれてあるのをチラチラ見ていたのですが、いつでも読めるという気持ちからか、今まで不思議に食指が動くことはありませんでした。

今回、やっと読み終えることができました。

 

希望の糸 東野圭吾著

 

娘から聞いたところによると、東野作品はどれも人気なのでほとんどが映像化されるのだそうです。

そのため登場人物たちは、その俳優さんたちのイメージが重なるのだとか。

作者本人もそれを心得ていて、例えば「マスカレード・ホテル」の刑事、新田浩介は木村拓哉さんをイメージして書いたのだとインタビューで答えていたそうです。

「この本もそうなの?」と私。

娘は「加賀シリーズの加賀恭一郎が出てくるでしょ?加賀恭一郎が阿部寛」

「へ?今回はちょい役だったよ」

「この本ではね。加賀シリーズは「祈りが幕が下りる時」で完結しているからね」

「ほう。ファンサービスだね」

「そうそう。加賀刑事出た!って感じ」

「松宮脩平が主人公だったでしょ?誰が演じてたの?」

「溝口淳平さん」

「へえ。そういうイメージで読んだらいいのか」

「そうだね~」

こういう読み方も面白いと思います。

イメージを固定されたくないという読者もいるでしょうが、映画と原作が互いに刺激しあって高めあっていく関係は、かつての角川映画を彷彿とさせて、私はどちらかというと好きな方です。

 

この「希望の糸」は、事件そのものに主題があるわけではないようです。事件に関わる人物たちの背景やドラマが丁寧に描かれます。

刑事が主人公なので事件がなければ彼らが物語に入る余地がないのでしょうが、殺人が起こらなくても、ドラマとしては十分に成立するお話です。

最後の最後に、「希望の糸」というタイトルが胸に刺さります。