名言として世の中に流れている言葉が、実際には違っているんじゃないかと思われることが、たまにあります。
例えば、スナフキンのこの言葉。
「知りあいがわんさといたって、友だちはひとりもいない」ってことは、ありうるんだよ
出典は「ムーミン谷の仲間たち」から、となっていましたので、手元にあるその本のページをパラパラとめくってみました。
一言一句同じ言葉というのはありませんでした。けれども「スニフとセドリックのこと」の章に、これに近いスナフキンのセリフがあります。
わからずやのスニフを諭している場面です。
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「なんだ、ばかばかしい」
と、スニフはがっかりしたようにいいました。
「ちっともばかばかしくないぜ。おばさんはそこにすわって、だれになにをやろうかと考えているあいだ、すいぶんたのしい思いをしたんだものな」
こういってスナフキンは、反対しました。
「あの人には親類がどっさりあったし、もっとたくさんの人を知っていたんだ。きみには友だちがないとしても、そういう人だってあるんだぜ。それであの人は、ひとりひとり、あの男の人はなにがいちばんすきだろうか。あの女の人にはなにがいいだろうなと、みんなの人のことを考えたのさ。それはまあ、たのしいあそびみたいだったそうだよ。(略)」
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名言では「知りあいと友だちは重みが違う」というふうになっているのに対して、実際の小説では「たくさんの人を友だちのように考える人だっている」ということになっています。
しかも、友だちがひとりもいないのは話を聞いているスニフのことのようです。
もしかしたら、出典間違いなのかも知れませんが、原文を読んでみないと本当のところはわからないですね。
いかにもスナフキンが言いそうなセリフではありますが、どんな場面で言ったんだろうかと不思議に思っていました。