冬の脱水症

 

私が研修医の時の話です。

 

ある冬の日、20代の男性が救急外来に担ぎ込まれてきました。

 

意識はしっかりしているものの、全身の筋肉の痛みが強く、ほとんど歩けない状態でした。

 

口渇も強く、皮膚も乾燥しており、脱水であることは明らかでした。

 

血液検査では、体内の水分が不足しているため血液が濃縮傾向にあり、腎機能低下がみられていました。肝臓の数値も異常値を示していました。

 

重度の脱水症でした。

 

その男性の普段の体重と比較して約-5Kgほど差がありましたので、その分の水分は急いで補液しました。

 

入院加療は必要でしたが、翌日には腎機能や肝酵素も正常化していました。

 

改めて、その男性に問いました。

 

「なぜ、この時期にあんなに脱水になったのか?」

 

返ってきた男性の答えはこうでした。

 

「2、3日前に風邪をひいた。鼻汁が出て体がだるく、どうも調子が悪い。自分は風邪をひいたら運動して治す主義。今度も早く治したくて、10Km走った。だけど、良くならなかった。運動が足りないと思ったので、次の日20Km走ろうと思った。15Kmぐらい走ったところで、意識がもうろうとしてきて足がツって、道端で動けなくなった。通りがかりの人が連絡してくれて、救急車を呼んでくれた。」

 

「水分は?」

 

「…摂ってなかった。」

 

冬で涼しかったから、咽喉が渇かなかったからかもと言っていました。

 

 

 

なぜ、私が急に研修医時代の大昔の話を思い出したかというと。

 

今日の外来に、ある男性が「最近走っていないから、風邪をひいた」と言って受診してきたからでした。

 

「風邪を走って治す」という主義の人は、意外に多いのかも知れませんね。

 

それはそれで良いのかも知れないですが、くれぐれも水分補給を怠らず、脱水症には十分に気を付けてください。

 

 

 

 

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