何となく恋しくなって、やっぱり、このフロスト警部シリーズに戻ってきてしまいます。いわゆる「クセになる面白さ」を感じているのでしょう。
今回も次から次へと事件が起こり、同時進行的に事件を解決しなければならないデントン警察署の刑事たちの活躍を描くものです。
自虐的…というわけではないつもりですが、この混乱・喧噪ぶりは、私が若い頃の研修医時代にそっくりです。
「いったん引き上げるか」と家路につこうとするフロスト警部が、車の無線に呼び出されて、新たな事件現場へ直行を指示されたり。
ある事件に集中したいのに、別の事件のことでひっかきまわされたり。
しかも、みな難事件!
そして、何より夜が長い!
夜明けを待っていたはずなのに、いつの間にか夜が明けていた!
私たちが研修医の時って、ずっと毎日がそんな感じでしたから。
この感じがわかるだけに、フロスト警部の全身にかかる重力が、自分にもまとわりつく感覚に襲われます。
この作品の紹介です。
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新任部長刑事ギルモアが配属されたのは、しけた町だった。まあ、ここは眼も眩む高みに昇りつめるための梯子の一段目にすぎない。こき使われる心配がなさそうなのも幸いだった。だが、いざ出勤してみれば、猛威を振るう流感に、署は壊滅状態。折悪しく、町には中傷の手紙がばらまかれ、老女ばかりを狙う切り裂き犯が暗躍を開始する。なんたる不運。そのうえ、だらしない風体に、悪夢のような下ねたジョークを連発する男、フロスト警部と組む羽目になろうとは……。
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確かなことは、フロスト警部の頑張りは、今でも私を勇気づけるものです。
ほかの刑事ものと違って、感情移入の深さが違います。