「むかしむかしあるところに、死体がありました。」

 

この本は昔から馴染みのある日本の昔ばなしを(無理やり?)ミステリーにしたてあげた短編集です。

考えてみれば、昔ばなしは「かちかち山」に代表されるように、残酷な話が多いのですが、登場人物が亡くなったとしても「殺人事件」として取り扱われることはないですね。

それはグリムやアンデルセン童話でも同じことで、物語の主題が「犯人探し」であることがないためでもあります。

昔ばなしの中に、あえて「犯人」を登場させ、謎解きを主題にしたら?

発想としては、ありそうでなかったですし、昔ばなしが見事に「本格ミステリー」として生まれ変わりました。

 

 むかしむかしあるところに、死体がありました。 青柳 碧人著

 

全部で5編の短編が収録されていますが、どれもショッキングな設定で、面白いです。

帯にあった収録作の紹介を載せますね。

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一寸法師の不在証明

お姫様を鬼から守った一寸法師。打ち出の小槌で大きくなった彼は、ある計画を心に秘めておりました…。

花咲か死者伝言

灰をまいて、花をさかせていたお爺さん。お殿様からもらったご褒美を、村に寄付するような優しい人でしたが、殺されてしまいました…。

つるの倒叙がえし

村の青年が、宿に困っていたつうを泊めました。そのお礼にと、つうは反物を織りますが、それが高く売れると知った青年は、もっと織れとつうに迫ったのです…。

密室竜宮城

亀を助けた浦島太郎は、連れて行かれた竜宮城で飲めや歌えの大宴会。そんな中、伊勢海老のおいせが殺されました。

絶海の鬼ヶ島

鬼ヶ島で行われた桃太郎とその仲間たちVS鬼たちの戦いは、桃太郎側の勝利に終わりました。でも本当の戦いが、そこから始まったのです…。

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タイトルにあるように、アリバイ崩し、ダイイングメッセージ、倒叙ミステリー、密室ミステリー、そして、過去の名作ミステリーをオマージュにしたミステリーなど、趣向を凝らしたミステリーが並びます。

ミステリー好きの方に、おすすめです。

 

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