80歳を過ぎて、生まれて始めてインフルエンザにかかったという方が受診しました。
1週間が過ぎて発熱もみられなくなり、インフルエンザはもう治ったのと思うのだけれど、なにしろ体がだるい。自分の体じゃないみたい。食欲ももどらないし、37℃の微熱が続くのはなんかおかしい。
ということで、2日を開けずに約3週間クリニックを受診していました。
その度に血液検査や胸部レントゲン写真などを検査しますが、異常はありません。
「栄養をできるだけ摂ってゆっくり休むこと」をおすすめしましたが、そもそも80余年の人生でインフルエンザにかかったことが不思議でならない。何かあるに違いないと思われているようで、納得していただけませんでした。
「インフルエンザにかかったあとも、こうやって後に影響を残すから怖い感染症なんですよ。医者が予防接種をすすめるのも、こういう事態があるからなんです。幸いに細菌感染が重なったわけではないようなので、ゆっくり休んでいけばきっとよくなりますよ。」
けれども、人の心配は言葉だけで打ち消せるものではありません。
それこそ80余年で築き上げてきた自信(過信?)が崩されてしまったのですから、原因をインフルエンザに向けるよりも、自分の内側へと向けてしまうのも仕方のないことだったのかも知れません。
「大きな病院に紹介してください。」
そう希望されたので、紹介したのが4週前のことでした。
血液の再検査や腹部エコー検査などをすませて、全身状態も良好とのことで、本人もやっと納得されていました。
この方だけでなく、「私はインフルエンザにかかったことが一度もない」と豪語される方が意外に多いことに時々びっくりします。
風邪にもかからないで一生を終えるにこしたことはないのですが、人間社会に住んでいる以上は数多くの感染源に接する機会があります。
予防はもちろんですが、罹患したあと、落ち着いて対応することが必要ですね。
ただし、休み方を知らない人がいることに、びっくりした経験をしたことがあります。
そして、ちょっと悲しくなってしまいました。
「がんばって、やすんでください。」
頑張らないと、休めない人がいることは確かなのです。