人は、あまりに慣れすぎると当然のこととして素通りしてしまうのですね。
私にとっては、それが「長時間透析」のようです。
先日、他院で血液透析をしている60歳台の方とお話する機会がありました。
「病院側にお願いして5時間してもらえるようになったんですよ。」
「ご自分から?」
「そうです。」
「どうしてですか?」
「待合室で患者同士の話で、時間を延ばしたほうがいいっていう話を聞いて。実は、なかなかこういった情報は入ってこないんですよね。」
「患者会の勉強会とか、行かないんですか?」
「私、入っていないから。透析のスタッフからも教えてくれなかったし。」
「そうなんですね。」
「ほかの患者も『今日は早く終わったから、良かった』って喜んでいるし。『違うだろ!』って思うんだけど。」
「よくご存知ですね。」
「1時間延ばしただけですけど、全然疲れの取れ方が違うのがわかります。」
「どのくらいかかりました?」
「私は2ヶ月ぐらいかな?2ヶ月ぐらいしたら、違いがわかってきました。」
「そうなんですね。」
「もっと早くやっておけば、動脈硬化もすすまなかったと思うんだけど。」
その方は透析歴20年を超えるのだそうです。
私たちのクリニックでも、クリニックに転入する前に私との面談を(時間の都合で)していない方はいまだに4時間の方もいます。
「転入してくるのなら、せっかくだから5時間からやってみたら?」
そう言ってすべての患者さんに「お試し」をすすめているのですが、申し訳ないことに透析時間のお話をされずに転入してしまう方が稀にいらっしゃいます。
「もったいないですね。」
先程の方が言いました。
「私の場合、どれだけの壁をクリアして、1時間の透析を延ばせたか…。病院がやってくれるのなら、喜んでやってみればいいのに、と思います。」
開業して6年が過ぎて、「長時間透析」が当然のクリニックで、私の方が慢心していたのかも知れません。
患者さん向けの発信は、まだまだ必要なのですね。