「これ見て!すごくない?」
相手の興奮がなかなか共感できずに、幾分冷めた温度差で返事をするしかありませんでした。
「すごいって?なくしたお金が見つかったとか?」
「え?これ見てわからない?」
お恥ずかしながら、解答を教えてもらうまでピンときませんでした。
私にとっては違和感がなかったのです。
「ほら!夏目漱石!旧札だよ!」
そうでした。今は野口英世が千円札の顔でしたね。
野口英世の千円札になったのは2004年のことらしいので、もうかれこれ14年間お世話になっている計算です。
それでも、私の網膜に夏目漱石が違和感なく入り込んできたのは、我ながら面白い現象だと思いました。
私にとってお札は細部で認識するものではなくて、お札の印象というか全体の雰囲気で把握しているものだというのがわかりました。
ただし、単純に面白がっている場合でもありません。
万が一偽札にぶち当たった時に、しっかりと見抜く自信がなくなってしまいました。
しかし、夏目漱石の千円札。いまだに普通に流通しているのですね。