(後半はネタばれを含みます。まだ観ていない方はご注意ください。)
「X-MEN」シリーズのウルヴァリンにとっての完結編「LOGAN/ローガン」をビデオで観ました。
「X-MEN」シリーズですが、いわゆる痛快ヒーローものではありませんでした。
観る者は、ウルヴァリンの老いて衰弱した姿を見て愕然とすると同時に、哀愁を感じるでしょう。
不死身たらしめていた治癒能力はほぼ失われていて、同じ異能者相手だとほぼ全敗の有様です。
チャールズも齢90となり、サイコキネシスの制御もほぼ自力で困難な状態です。
それに加え、チャールズを世話するウルヴァリンとの日常は「介護」そのものです。
チャールズが言い放つ「私が死ぬのを待っているんだろう」という言葉は、老いと介護について観客にいやでも考えさせてしまうシーンです。
ヒーローもの、という色メガネで観るよりも、現実の社会問題を描出した映画と考えた方が良いかも知れません。
実際、全編にわたって物悲しく、痛快さはほとんどありません。
最後のクライマックスでは、ウルヴァリンは自らのクローンにやられてしまい命を落とすことになります。
ローラに見守られ「パパ」と呼びかけられて、ウルヴァリンは初めて自分で彼女の手を握りしめます。
今まで手を握られても振り払っていた彼が「そうか」とつぶやきます。
「こういう感じなのか…」
納得し、満足が得られた表情をして、息を引き取るのでした。
闘いに明け暮れた人生の中で、家族の愛に包まれた安らぎを初めて知った彼の、象徴的な最期の言葉でした。
他のヒーローものの映画のようにスカッとはしないかも知れません。
けれども、私は時代を映した良い映画だと思いました。