自恃(じじ)

 

「盲目の秋」という詩があります。中原中也の詩です。

以下に、その詩の一節を紹介しますね。(今は夏ですが、季節とは関係ない詩なので大丈夫です。)

 

 

盲目の秋

 

これがどうなろうと、あれがどうなろうと、

そんなことはどうでもいいのだ。

これがどういうことであろうと、それがどういうことであろうと、

そんなことはなおさらどうだっていいのだ。

 

人には自恃(じじ)があればよい!

その余はすべてなるまゝだ…。

 

自恃だ、自恃だ、自恃だ、自恃だ、

ただそれだけが人の行いを罪としない。

 

平気で、陽気で、藁束のようにしんみりと、

朝霧を煮釜に填(つ)めて、跳び起きられればよい!

 

 

自恃(じじ)とは、「自分自身を信じ、たのみとすること」という意味です。

「恃み」は「たのみ」と読みます。

 

以前に紹介した夏目漱石の「私の個人主義」に通じるものがあります。

こちら → 「夏目漱石『私の個人主義』」

 

虚無の壁にぶちあたった人間が、現状を打破すべく「どうにでもなれ!」ともがく姿が目に浮かぶようです。

 

この詩の最初の4行が、その勢いのリズムそのまま、好きです。

 

 

 

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