「九相図」というカテゴリーの仏教画があります。(くそうずと読みます。)
人の亡骸(なきがら)が腐敗して白骨化するまでの変化を9つの段階で描いた絵画です。
主に鎌倉時代から江戸時代にかけて描かれました。
不気味な絵なのですが、私は昔から不思議にその絵に惹きつけられていました。
仏教では、死体の変化を9段階に分けて観想することで、人の肉体への執着を滅却する修行として使われていたそうです。
サマタ瞑想の不浄遍に当たる、いわゆるイメージトレーニングです。
それから、九相図にはもうひとつの役割を担っていたと言います。
それは男性の、女性に対する欲望を戒める役割です。
絶世の美女も、死んでしまったら皆醜くなって骨となってしまうのだよと、男性に向けて女性に対する執着を捨てなさいという教えが込められているということです。
人間は、死んでしまったらみんな骨となり土に還る。欲望を燃やす対象になっているのは、その骨を覆っている肉にすぎない。
肉体への執着は、自他の区別なく渇愛となって、苦しみの原因となります。
もっと、九相図について調べてみたいと思いました。とても興味深い絵画です。
下の図は、ウィキペディア・コモンズから引用してきました。
さすがに、途中の腐乱した屍は掲載を控えました。