よく聞くということ

 

渡辺和子さんの著作には、ハッと気づかされる言葉が多くあります。

 

最近、目にした言葉には、こんな言葉がありました。

 

 

理解への努力の一番目は、やはり“よく聞く”ということだと思います。

私たちには耳が二つあるのに口は一つしかないということは、自分が話すよりも二倍聞かないといけないということの象徴的な姿なのかも知れません。

「人間としてどう生きるか」より

 

 

これは日常の診療でも経験することです。

 

例えば、待合室に待っている方がほとんどいない時がありました。

そのため、その日はその患者さんのためにゆっくりと時間をとって話を聞こうと思いました。

日頃、短い診療時間のために聞けなかったことを、“よく聞く”つもりで、相槌をうちながら聞いていたのです。

私からはほとんど口をはさまず、お話を聞かせていただいただけだったのですが、診療が終わって診察室から出る時に、その方が言った言葉が印象的でした。

「先生、今日はありがとう。良い話を聞かせていただきました。」

 

 

理解されたと思った時に、人は物語を共有したと思うのでしょうね。その手ごたえが、その方にそういう言葉を言わせたのだろうと思います。

 

理解しあうというのは、「聞く」ことから始まるようです。

自分のことを伝えようと躍起になることからでは、決して理解は始まりません。

 

 

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