こんなに夢中になって読んだのは、久しぶりだったかも知れません。
サンデーとマガジン~創刊と死闘の15年~ (光文社新書) 大野茂著
著者はNHKプロデューサー。
「はじめに」にこんな文章があります。
「流行っている音楽や映画には、必ずプロデューサーがいるように、どんな天才作家がいて傑作が生まれたとしても、それを世の中に広めるためには、編集者という陰の仕掛け人の存在が必要である。黒子に徹してきた編集者の大衆をつかむプロデュース感覚、ポップカルチャーへの大いなる功績はもっと皆に知られてもよい。まして「サンデー」と「マガジン」という2つの週刊少年誌の競い合いがなかったら、現在の日本のマンガ文化の流星はなかったと言っても大袈裟ではない。そして、その闘いの歴史には、個性豊かな編集部員たちの人間ドラマが秘められていたのである。」
この文章を読んだだけでも、ワクワクして来ませんか?
著者は、それらの記録の再現ドラマを交えた特番を制作し、2009年にNHK総合テレビで放送したそうです。
その番組を元にはしているものの、「単なる番組の活字化はない」という自負に溢れた渾身の書籍です。
「下町ロケット」などを彷彿とさせる、良質な企業ドラマを読んでいるような感覚に襲われました。
手塚治虫、横山光輝、ちばてつや、川崎のぼる、寺田ヒロオ、藤子不二雄、赤塚不二夫、石森章太郎…。
キラ星のように輝く漫画家たちと、「サンデー」と「マガジン」のライバルとしての競い合い。
時代を彩ってきたブームと、その火付け役となった当事者たちの言葉。
例えば、怪獣ブームや拳銃ブーム、切手ブームなど…。
当時の少年たちが経験してきた熱狂とともに、「サンデー」と「マガジン」はありました。
ドキュメンタリー映画を見ているかのような爽快感が読後にありました。
私と同じ世代には、ぜひ読んでほしい本です。