「春と修羅」

四月です。

四月になったら必ず思い出す詩があります。

それは宮沢賢治の「春と修羅」。

そのままの詩が、青空文庫に載っていましたので紹介しますね。

 

 
春と修羅
   (mental sketch modified)

 

 心象のはひいろはがねから

 あけびのつるはくもにからまり

 のばらのやぶや腐植の湿地

いちめんのいちめんの諂曲てんごく模様

 (正午の管楽くわんがくよりもしげく

 琥珀のかけらがそそぐとき)

いかりのにがさまた青さ

四月の気層のひかりの底を

唾つばきし はぎしりゆききする

 おれはひとりの修羅なのだ

(風景はなみだにゆすれ)

 砕ける雲の眼路めぢをかぎり

 れいろうの天の海には

  聖玻璃せいはりの風が行き交ひ

   ZYPRESSEN 春のいちれつ

    くろぐろと光素エーテルを吸ひ

     その暗い脚並からは

      天山の雪の稜さへひかるのに

      (かげろふの波と白い偏光)

       まことのことばはうしなはれ

     雲はちぎれてそらをとぶ

    ああかがやきの四月の底を

   はぎしり燃えてゆききする

  おれはひとりの修羅なのだ

  (玉髄の雲がながれて

   どこで啼くその春の鳥)

   日輪青くかげろへば

    修羅は樹林に交響し

     陥りくらむ天の椀から

      黒い木の群落が延び

       その枝はかなしくしげり

      すべて二重の風景を

     喪神の森の梢から

    ひらめいてとびたつからす

    (気層いよいよすみわたり

     ひのきもしんと天に立つころ)

 草地の黄金をすぎてくるもの

 ことなくひとのかたちのもの

 けらをまとひおれを見るその農夫

ほんたうにおれが見えるのか

 まばゆい気圏の海のそこに

(かなしみは青々ふかく)

ZYPRESSEN しづかにゆすれ

鳥はまた青ぞらを截る

(まことのことばはここになく

 修羅のなみだはつちにふる)

 

あたらしくそらに息つけば

 ほの白く肺はちぢまり

(このからだそらのみぢんにちらばれ)

いてふのこずゑまたひかり

ZYPRESSEN いよいよ黒く

雲の火ばなは降りそそぐ

 

 

YouTubeに木村多江さんの朗読がありました。

 

 

 

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