「鑑定士と顔のない依頼人」

「いかなる贋作の中にも必ず本物が潜む」

抜群の炯眼の持ち主である天才鑑定士。

彼の眼力は、その絵画を一瞥しただけで贋作か本物かを見分けます。その判断は、データによる科学分析を上回るほどでした。

 

「本物」を見分ける能力を持つ彼は、あらゆる芸術愛好家たちから信頼され尊敬されています。

地位や名誉だけでなく、財力も築き上げた初老の彼は、ディナーさえもひとりストイックなほどに「本物」にこだわる生活をしていました。

しかし、そんな彼も、生きた「本物」の女性に対してはあまりにも畏れが強く、目を合わせることもできません。

神経症的な彼が取った行動は、生涯を通じて女性をテーマにした名画をコレクションすることでした。

彼のバックに並ぶ絵画は、その女性達を描いた名画の数々です。

 

 

その彼が初めて経験する若く美しい女性との恋。

「いかなる贋作の中にも必ず本物が潜む」

映画の中で、何度も繰り返されるセリフです。

 

この映画をラストでは、贋作のありかは嫌というほど思い知らされました。

ところで、その贋作の中に「本物」は潜んでいたのでしょうか。

 

時計の歯車に囲まれたカフェに座る彼の目線の先に、願わくば「本物」が訪れんことを。

そう思わずにはいられないほど、切なくなる映画でした。

 

 

 

 

 

 

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