「モーツァルト効果」

真偽のほどは置いといて、「モーツァルト効果」のようなお話は信じたくなります。

「モーツァルト効果」というのは、「モーツァルトの曲を聴くと頭が良くなる」 という効果のことです。

そういう効果が本当だとしたら、便利ですね。音楽を聴くだけで頭が良くなるのなら、ずっとBGMで流しておいた方がいいのかなとも思ってしまいます。

そうそう。胎教にいいとも聞いたことがあります。

 

けれども、医師の立場としては、ちょっと掘り下げてみてみたい好奇心にかられてしまいました。

今回は「モーツァルト効果」について少し調べてみたので、紹介します。

 

実は、最初に言いだしたのはかなり大まじめなお話で、1993年のNatureにその論文が掲載されました。

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これは、カリフォルニア大学アーバイン校の心理学者 Frances H. Rauscherの論文です。

 

実験は、36人の現役大学生にそれぞれ10分間、次の3通りの状況を経験してもらった後で、空間認知やパターン分析に関するテストを受けさせて点数を比較するというものでした。

以下の3つのパターンです。

1) Silence(静かなところにいてもらう。)

2) モーツァルトの「二台のピアノのためのソナタ ニ長調 K448」を聴く。

3) Mixed(ダンス音楽やお話など、リラックスするようなオーディオテープを聴いてもらう。)

空間認知やパターン分析のテストとは、以下のような切り抜きの図や、犬の絵などを使用しています。

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結果はモーツァルトの 「二台のピアノのためのソナタ ニ長調 K448」を聴いたグループは、空間認知に関するIQが8-9ポイント上昇するというものでした。

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面白いことに、モーツァルト効果は10~15分ほどしか持続しないとしています。

どうしてモーツァルトの曲がそういう効果を出せたのでしょうか?

そして、何よりこの実験から導き出された結果は本当なのでしょうか?

 

これのアンサー・ソングというべき論文をハーバード大学のChristopher F. Chabrisという人が、6年後の1999年に同じ「Nature」に発表しました。

Prelude or requiem for the ‘Mozart effect’? という論文でラウシャーの論文から6年後の1999年に発表されています。

このクリストファー・チャブリスという方は「錯覚の科学 あなたの脳が大ウソをつく」という本の著者で、サブリミナル効果やボケ防止の脳トレ、このモーツァルト効果についての錯覚や思い込みを解読してくれている方です。

 

チャブリスは、能力向上が認められるのは右脳が司る分野だけで、その人がその音楽を心地よいと感じるかどうかに依存するもので、それはモーツァルトに限らずクラシック音楽全般に言えることなのだと言っています。

もともとのラウシャーの論文でも、空間認知に関する分野での能力向上だけであったはずですが、時が経つにつれて「モーツァルトを聴くと頭が良くなる」ということになってしまい、これが大きな迷信となって広まってしまったようなのです。

 

あってほしいなとちょっとだけ期待していたのですが、残念ながら、ことの真偽はそういうことのようです。

そうは言っても、時々、仕事をはかどらせたい時に、私はバロック音楽をBGMにします。

気持ち良く仕事ができていた気がしていたのですが、それも錯覚だったのかな?(笑)

 

ちなみに「二台のピアノのためのソナタ ニ長調 K448」をYouTubeからひろってきました。