マーティン・ガードナーは数学者であり、マジシャンです。
「サイエンティフィック・アメリカン」に連載されていた「数学ゲーム」というコラムで有名な著述家でもあります。
その彼が著した「数学マジック」という本は、1959年と1999年に白揚社から2度出版されている本です。
彼が「はじめに」に書いた文章がユーモアに満ちていますが、やや自虐的です。
「どの研究分野にもいえることだが、いくつもの部門にまたがる中間的な性格をもつ研究対象というのは、とかくいずれの側からも軽べつされがちである。
“数学マジック”もご多聞にもれず、2通りのあなどられ方をすることが多い。
つまり、数学の専門家からはとかくつまらない遊びと軽んじられ、他方、奇術師からはスリルにとぼしいと無視されがちである。」
ところが、マーティン・ガードナーの莫大で広範な知識は、そういう一般論を吹き飛ばして「数学マジック」に新たな魅力の再発見をもたらしてくれました。
今回は「第5章 位相数学によるマジック」から、ひとつマジックを紹介します。
位相数学(トポロジー)というのは、ガードナーの説明では「物体を連続的に変形させていったとき、それでもなお不変であるような物質を扱った学問」ということです。
難しく考えずに簡単にいえば、ロープ、ハンカチ、ゴムの輪といった曲げられるものを使ったマジックのことなんですね。
「しっかり結んだはずなのに」と題されたマジックです。(113ページ)
1950年代にエドウィン・テイバーというマジシャンによって創案されたと記されています。
原案では2枚のハンカチをロープ状に細めて、それぞれの真ん中をあわせて十字状に持ち、しっかりと結ぶのですが、両端を引くとハンカチはすぐにはずれるというものです。
ハンカチをストローに変えてはいますが、このマジックの実演がYouTubeにありましたので、ご覧ください。
「数学マジック」の印象が変わりませんか?