時々は私も「哲学」に触れます(笑)。
サルトルは小説「嘔吐」のなかで、実在のジャズの曲を登場させました。
パリ行きの列車を待つ主人公がカフェに入り、ジャズのレコードを聴くシーンです。
「嘔吐」 鈴木道彦訳 から引用しますね。
私はウェイトレスを呼ぶ。
「マドレーヌ、お願いだからレコードで、一曲かけてくれないか。ぼくの好きなやつを。ほら、Some of these days(いつか近いうちに)だよ」
Some of these days You’ll miss me honey
(いつか近いうちに、いとしい人よ私の不在を寂しく思うでしょう)
いったい何が起こったのか。〈吐き気〉が消えたのだ。
サルトルは「ジャズは自由と必然性の統一」だと言ったそうです。どんな音が飛び出してくるか予想もつかないジャズが、いったん演奏されるとそれが必然性のあるメロディーとして奏でられる。
このジャズのシーンは、すべて意味のない存在として絶望の果てにたどりついた主人公が、喪失の果てに救済を予感させるものとして描かれています。
最後の最後に救済される人間の可能性。そこに流れる曲…。
「Some of These Days」を紹介しますね。