「スフィンクス」 と言えば、ギザの大スフィンクスを思い浮かべる方が多いでしょう。
けれども、ギリシアのスフィンクスは、エジプトのスフィンクスとだいぶ異なっています。
スフィンクスが登場するのは、三大悲劇詩人ソフォクレスの代表作「オイディプス王」。
アホロドーロスの「ギリシア神話」には、スフィンクスに関する描写がこうあります。
「これは女面にして胸と足と尾は獅子、鳥の羽を持っていた。」
ギザの大スフィンクスと違って、ギリシア神話の妖獣スフィンクスは女性なのです。
はっきりとした乳房を持ち、背中には羽を生やしています。
乳房に象徴される母性と、獅子に象徴される獣性の二面性の属性が強調された妖獣です。
もともとスフィンクスは男色の罪を犯したテバイの王、ライオスを罰するために、ゼウスの妻ヘラによって送られた刺客でした。
実は、スフィンクスという言葉は「絞め殺す」という意味を持っていたのです。
テバイでは、スフィンクスが通りかかった者たちに謎かけをし、それが解けないと食べてしまうという災いが続いていました。
オイディプスはスフィンクスに対峙して、あの有名な謎かけを解き明かします。
謎とはこうです。
「朝は4本足、昼間は2本足、晩に3本足で歩くものはなにか」
オイディプスは「人間」であると即答します。「なぜなら、赤児の頃には4本足で這って歩き、成人では2本足になり、老年になってからは杖を第三の足に加えるから」
実は、この謎は次のようだったという説もあります。
「一つの声を持ち、二つ足にして四つ足にして三つ足なるものが、地上にいる。」
「それが最も多くの足に支えられて歩くとき、その肢体の力は最も弱く、その速さは最も遅い。」
つまり、同時に2本足でも3本足でも4本足でもあるものは何か?というものです。
そして、その答えは「人間」ではなく、なんと「オイディプス自身」でした。
なぜならば、オイディプスは生後すぐに踵をピンで貫かれ山奥に捨てられました。そして、ピンを抜かれ、2本足の人間に成長しましたが、足は腫れたままでした。(オイディプスという名称は「腫れ足」という意味)
さらに、知らぬこととは言え、彼は父親を殺し、母親と交わって子を得るという数奇な運命をたどることになります。(獣同然の行為=4本足)
彼は王になった後に自分の犯した罪を知ることとなり、自ら目をつぶしてしまいます。(杖を必要とする=3本足)
下の絵は、スフィンクスに対して自分自身を指さしているオイディプスです。