「戦国時代」という言葉の由来となった「戦国策」という書物があります。
中国の「春秋戦国時代」での国策や逸話などを編集し、まとめあげた書物で、よく知られた言葉に「虎の威を借る」などがありますね。
改めて、紹介するとこんなお話でした。
虎、百獣を求めて之を食らふ。
狐を得るに、狐曰はく 「子敢へて我を食らふ無かれ。天帝我をして百獣に長たらしむ。今、子我を食らはば是れ天帝の命に逆らふなり。子我を以って信ならずと為さば、吾子の為に先行せん。子我が後に随(したが)ひて観よ。百獣の我を見て敢へて走らざらんや。」と。 虎以って然りと為す。故に遂に之と行く。獣之を見て、皆走る。虎獣の己を畏れて走るを知らざるなり。以って狐を畏ると為すなり。 |
ざっと口語訳するとこんな感じです。
虎は、ありとあらゆる動物を食べるので恐れられていました。ある日、狐をつかまえて食べようとしたのですが、そこで狐はとっさに次のようなことを言いました。
「待ちなさい。あなたは私を食べてはいけません。私は天帝から百獣の王に任命されているのです。今私を食べたのなら、あなたは天帝に逆らうことになります。」 しかし、虎が信じようとしなかったので、狐はこう続けました。 「それならば、一緒についてくるがよいでしょう。私はあなたのために先に歩いていきましょう。後ろについて私のことを見ていなさい。百獣の王である私の姿を見た他の動物たちは、みんな恐れて逃げるはずですから。」と。 虎はそこまで言うのならと、狐についていくことにしました。すると、動物たちはこの様子を見て、皆走って逃げていきました。狐の後ろについている虎を見て逃げ出したのです。虎は、動物たちが自分のことを恐れて逃げていったということを気づかずに、狐のことを恐れているのだと思ったのでした。 |
「虎の威を借る狐」というのは、このように「権力のある者の威光を傘に、威張り散らす小人物」の例えにつかわれます。
と同時に「人は何に恐れをなしているのか。恐れているものの本質は何か」ということを表しているのだと思います。
表面上のことだけではない「そもそも何に?」に戻ることが大切ですね。