プシュケの箱 ギリシア神話から

 

ギリシア神話は大好きなわりに、思い込みで盛り上がってしまって勘違いしていることがありました。

以前にパンドラのお話をした時にJohn William Waterhouse の絵画を紹介したのですが、その絵が間違っているとご指摘を受けました。

女性が箱を開けている構図がパンドラだと思い込み、それを固く信じ込んでいたのです。

正しくはこの女性はプシュケでした。

psyche

なぜこの女性が箱を開けているのかを説明しますね。

 

王女プシュケはその美貌のために女神アフロディテ(ヴィーナス)の嫉妬を買うことになります。

人間の女などに負けることが許せないアフロディテは、息子キューピッド(エロース)に命じて愛の弓矢を使って醜男に恋をさせようとします。しかし、そのキューピッド自身が誤って弓矢で傷ついてしまいプシュケに恋してしまいました。

彼はプシュケに「決して夫の顔を見ない」という約束をし、自分の正体が神であることを隠して彼女の夫となります。

ところが、プシュケは姉たちにそそのかされてロウソクの灯で彼の寝姿を照らし、その正体が愛の神キューピッドであることを知ってしまうのです。

その時にロウソクの蝋を落としてしまい、キューピッドに火傷を負わせてしまいます。

 

キューピッドの後を追ってアフロディテの宮殿に赴いたプシュケに、怒れるアフロディテは数々の難題を押し付けました。

大麦小麦などの穀物の山を1日で種類別に分けること、凶暴な金の羊から金色の毛皮を刈り取ること、龍の棲む生命の泉から水をくむことなど…。それらをプシュケは不思議な助けを借りて難題を乗り越えて行きます。

そして最後に、冥界の王妃ペルセポネから『美の箱』をもらってくるようにという試練が出されました。

首尾よく美を分けてもらったプシュケでしたが、湖に映った自分のやつれた顔に驚きます。やがて自分の容色も衰えキューピッドの愛も失うのではと不安になったプシュケはその箱を開けてしまうのです。(このシーンが上の絵画です。)

箱の中には「美」ではなく、代わりに冥界の「眠り」が入っていました。

プシュケはとたんに眠ってしまいます。

そこへ偶然通りかかったキューピッドは昏睡状態のプシュケから眠りを取り去って箱に集めて、ゼウスに仲裁を求めました。そして、プシュケに神の酒ネクタルを飲ませ、神々の仲間入りをさせました。

アフロディテもやっとプシュケの一途な愛を認めざるを得ず、二人は正式に結婚することが許されました。

二人の間にはウォルプタース(喜び)という女の子が生まれ、一生ともに幸せに暮らしたと言います。

 

 

 

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