詩人の言葉は「救いの言葉」です。
ずっと昔から詩人の誰かが言葉として表現してくれた心情や風景が、私たちに色彩を与えてくれます。
詩人の言葉は生活に息づいて、やがて全体の感受性となってきます。
茨木のり子さんの詩は、私にとってそんな詩です。
例えば、次の詩。
じっと黙っている時の、あの頃の気持ちってこんなだったじゃないかって思い出してしまいました。
言いたくない言葉
心の底に 強い圧力をかけて
蔵(しま)ってある言葉
声に出せば
文字に記せば
たちまちに色褪せるだろう
それによって
私が立つところのもの
それによって
私が生かしめられているところの思念
人に伝えようとすれば
あまりに平凡すぎて
けっして伝わってはゆかないだろう
その人の気圧のなかでしか
生きられぬ言葉もある
一本の蝋燭のように
熾烈に燃えろ 燃えつきろ
自分勝手に
誰の眼にもふれずに