若い頃には本屋に立ち寄ると、まとめ買いをするのが楽しみでした。
(今はやや抑え気味になりましたが)
表紙を見て、ぱらぱらとめくって気に入ったものを両手で抱える。
レジで「え?そんなにするの?」とびっくりして「すみません。この本はいいです。」
予算内におさめるために、そこで本の数のさじ加減をする。
「…すみません。この本もいいです…。」
前もって計算していけばいいのにと自分でも思いました。
(そもそも貧乏学生の財布の中にいくら入ってたんでしょうか。)
そんな買い方なので、家に帰ると「あれ。これ前に買ってたんだ。」という本が時々ありました。
武者小路実篤の書物がそうでしたし、神谷美恵子「生きがいについて」もそうでした。
ちゃんと読んでいるはずなのに、本屋で手に取ると不思議な催眠術にでもかかったように惹かれてしまっていたんですね。
「生きがいについて」は1966年が初版ということですから、すごく息の長い本です。
それだけ普遍的に共感を得た本だということなのでしょう。
この中で著者はこう言っています。
長い一生の間には次のような問いが発せられる。
1)自分の生存は何のため、またはだれのために必要であるか
2)自分固有の生きていく目標は何か。あるとすれば、そこに忠実に生きているか
3)以上あるいはその他から判断して自分は生きている資格があるか
4)一般に人生というものは生きるのに値するものであるか
ふつう壮年期は無我夢中で過ごしてしまい、だんだん年をとってそれまでの生きがいがうしなわれていく。
そして、生きる目標を変えて行かなくてはならないときに、この問題が再び切実に心を占めることになる。
自己の生存目標をはっきりと自覚し
自分の生きている必要を確信し
その目標にむかって全力をそそいで歩いているひと
― いいかえれば使命感に生きるひとが一番生きがいを感じる人種である。
自己に対するごまかしこそ生きがい感を何よりも損なうものである。
最後の文の言葉「自己に対するごまかし」については、よくわかるような気がします。
自分に対する裏切りをすることで、何度落ちたことかと思い当たるのです。