柳田邦男著「元気がでる患者学」の中に「治療的自我」についての説明と考察があります。
「治療的自我」とは、治療を施す者には治療効果を促すことができる、ある種の人格や人柄が備わっているものだとするものです。
人に信頼され心を開いてもらえるような、心を耕す目標としての人柄です。
その中に桂載作先生の論文『治療的自我の昂揚をめざして』が紹介されていて
クライエントに心を開いてもらうために望まれる医療者のあり方や態度についての4つの要点がまとめてありました。
私にとってもとても参考になるものでしたので、是非ここで紹介させて下さい。
(引用ここから)
1)相手に好かれていること。
相手を批判したりするのでなく、まずは相手の話を受け容れ、共感的に理解するとともに、無条件の積極的関心を持つこと。
2)信頼されていること。
専門家としての知識と技術にとともに、人間的なあたたかみが必要。
3)尊敬されていること。
謙虚さと感謝の念を常に持つこと。
患者の病気がよくなった場合、医療者である自分が治したのだろうか。
必ずしもそうではない。患者自身が治した、あるいは治るエネルギーを発揮したと言うべき部分が多いはずだ。
自分の位置や行為について、思い上がりがないかどうかの反省が、謙虚さを身に着けるには必要だ。
そのように自分の価値観を変えることのできるのは、自分だけだということについて、深い認識が必要だ。
4)相手の心を打つものがあるか。
あたたかい思いやりが必要。
ただし、ただ情に流されるだけでは駄目で、“Medicine is art.”と言われるように、科学性と芸術性の両面が求められる。
相手の心を打つような芸術性の要素としては、
一生懸命であること、
信念を持ち燃やし続けていること、
あくまでも患者の幸福を願っていることなどの度合いの強さが重要。
(引用ここまで)
1)の文中にある「無条件の積極的関心」という言葉にはとても共感するものがあります。
この項目のタイトルは「相手に好かれていること」ですが、好かれる好かれないはこちらの方からどうなるものでもありませんね。
では医療者ができることは何かというと、ここにある「無条件の積極的関心」に尽きると思うのです。
マザー ・テレサの有名な言葉を持ち出すでもないかも知れません。
他には4)の「信念を持ち燃やし続けていること」という言葉にはいつも強い憧れがあります。