患者の経験を理解する

 

全人的医療の実践を行おうと思うとき

疾患(Disease)と病気(Illness)の違いについての理解が促されます。

 

簡単にいえば、「疾患」とは医師が患者の状態を説明するために分類し定義したもの。

「病気」とは、患者が抱える問題や主観的な経験のことと説明されています。

 

そもそもが、同じ経験を表現するのに、医療者側と患者側の双方の言語が違っているという反省をもとにしたものです。

患者側は、自分の経験を表現する方法を学んだことがありません。

日常生活の中で考えたこともないと思うのです。

 

たとえば、「お腹が痛い」にしても、診察する医師から矢継ぎ早に質問を浴びせられた経験をお持ちの方はたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。

特に救急外来ではこんな感じです。

「いつから痛いのですか?」「何をしている時?食事と関係ありますか?」

「どこが痛いのですか?」「痛みの間隔は?」

「どんな痛みですか?」「便はどんな?」

 

ちょ、ちょっと待って。私、痛くて答えられないんですけど…。

なんでそんなに責めるように訊くんですか…。

 

急性の疾患はとにかく、自分の状態を表現するって本当に難しいんですよね。

 

特に「どんな痛みか」って聞かれた時など、「とにかく痛い」としか言いようがない時ってあると思うのです。

(それをそのまま言ってくれたら良いのですよ

 

けれども医師は、すぐに手術が必要で、生命にかかわるような「急性腹症」ではないかと緊張し、焦っていますから、必死の診察を行います。

 

慢性の疾患でも、医師側と患者側の言葉が通じていないことは残念ながらあります。

表現する側は自分の状態をどう説明していいかわからないまま受診されている方がほとんどでしょう。

 

医師は患者が話すのをじっと黙って聞けませんから、その説明を遮って「あなたの言いたいことはこれですか。」と「表現」を手助けしたつもりでいます。

患者側は「ん?医療界ではそういうのか。何となく違っている気がするけど、そうなのかな。ま、いいや。その表現で。」と妥協してしまうかも知れません。

それが合っていればよいのですが、勘違いや全く通じていないことも時に経験します。

 

初診の方など、なんとかそれを防げないかというアプローチがあります。

患者さんの経験「解釈・期待・感情・影響」を探るものです。

クリニックの問診票の裏側にフレームをつくってみました。

それを意識しながらお話するだけでも変わるのではないかと設けてみたものです。

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