「生きる」
言わずと知れた黒澤明監督の代表作です。
市役所の市民課長を務めている男性の人生を描いています。
無気力でハンコを押すだけで、事なかれ主義を絵にかいたような毎日。
ある日、胃の調子が悪くて検査をしてもらった後に医者から「胃潰瘍」だと言われた男性。
けれども彼はガンであることを自分で確信しています。
シナリオが巧みで、この映画の命題がさらっと登場します。
男性が帰った後、若い医者に主治医が声をかけるのです。
「もし、君がね、あの人のようにもう4ヶ月しか命がないとしたら、いったいどんなことをする?」
何をすれば良いかさまよい歩く男性の前に 屈託のない若い女性の「とよ」が言います。
「課長さんも何か、作ってみたら?」
命の尺を知っているからこそ、それからの男性は鬼気迫るものがあります。
かつて主婦たちが子どもたちのために、汚水溜めの場所をなんとか公園にできないかと陳情していたことを思い出したのです。
やくざにからまれても粘り強くあきらめません。
自分がどう思われようともひたすら前に進みます。
そして、ラスト。
雪の降る夜。
ブランコに揺れながら笑みを浮かべて歌を口ずさむ男性。
いのち短し 恋せよ乙女
(略)
心の炎 消えぬ間に 今日は再び来ぬものを
男性は「死を目の前にして、人のために全力を尽くす」生き方を選びました。
「生きる」ということの黒澤監督のメッセージが温かく力強いです。
時々、見直して「よしっ」って力をもらうんですね。
[youtube]http://youtu.be/_mLrLHDdXHI[/youtube]