毎日の診療で心がけているのは、できるだけ日常の言葉で説明するということです。
クリニックでは、胸部レントゲン写真や心電図、エコー検査、骨塩定量、
前に紹介した動脈硬化を調べるABIやCAVIの検査などができます。
血液検査や尿検査も項目によってはその日で結果が出ますので
診断をつけ、その方と治療方針を相談することができます。
ある日、撮影したばかりの胸部レントゲン写真を前に
いつものように説明を始めました。
「胸部レントゲン写真は、ちょうどヒトとヒトが向き合うように写ります。
ですから、左側に右肩、右側に左肩があるのです。
それから…。」
ひとつずつレントゲン写真のイロハから、説明するようにしています。
そうしているのは、説明しながら再度細かく確認できるというのがあります。
大事な検査ですから、見落としがあってはいけません。
「この丸く見えるもの、何ですか?」
ご自分のレントゲン写真に関心を持ってもらって
質問してもらえると、なお助かります。
けれども、今回は少々違っていました。
いつもの説明が、すーっと理解してもらえている手ごたえがあったのです。
説明が終わった後に、やはり気になったのでお聞きしました。
「失礼ですが、お仕事は何をされていた方ですか?」
やはり、医療従事者の方でした。
それも、私などペーペーの、大先輩の医療従事者です。
重鎮といっても良い方でした。
「うわあ。お恥ずかしい。釈迦に説法でしたね!言ってくださったらよかったのに!」
その方は、優しく微笑み、静かに
「いや。よくわかりましたよ。こうやって説明すると患者さんも安心するし喜ぶでしょう。」
参りました。
どれだけ赤面したことでしょう。