外来で貧血の検査を行うと、いろいろなことがわかってきます。
赤血球の数、赤血球の大きさ、色素の濃さ、赤血球のサイズの散らばり具合…。
実は、貧血だけでなく、栄養素の充足具合もわかってくることがあります。
言うまでもなく、女性の貧血の原因は「鉄分不足」のことが多いのですが
ビタミン不足が原因になることもあり
何が足りないのか、どうして足りないのかを想像することで
その方の生活背景まで浮かび上がってくることがあります。
「Aさんは、もしかしたらお酒をよく飲まれる方ですか?」
「あ、はい…。」
「ちゃんと休肝日はとっていますか?」
「…。検査はウソをつかないのですね。実は…」
というお話になることも、時々あります。
お酒を飲むとビタミンB群が不足してきます。
「私はお酒を飲みながらちゃんと栄養も摂っている」とおっしゃっている方
少し待ってお話を聞いてください。
どうして不足するのかを、説明してみます。
アルコールは、アルコール脱水素酵素(ADH)という酵素の働きで、アセトアルデヒドに分解されます。
さらにアルデヒド脱水素酵素(ALDH)の働きで酸化され酢酸に変わります。
酢酸はアセチル-CoAに変換され、TCAサイクルで代謝されてエネルギーに変換されます。
アルコール脱水素酵素(ADH)とアルデヒド脱水素酵素(ALDH)が作用する過程で
ナイアシン(ビタミンB3)が消費されるのです。
さらに大量の飲酒をした時には、この代謝経路だけでは足りず
もともとタンパク合成などの代謝を行なうミクロソームエタノール酸化系酵素(MEOS)が
アルコール代謝を始めます。
このMEOS代謝では、主にチアミン(ビタミンB1)が消費されます。
ビタミンB群は
ほかにも糖質、脂質、たんぱく質、アミノ酸などの代謝にかかわる補酵素として働いていますので
大量に摂取したアルコールを代謝する過程で、ビタミンB群が消費されてしまうと
貧血や、末梢神経障害など、生体内のバランスを崩してしまうのです。
体の中のアルコールを代謝することが優先されてしまうのですね。
お酒の飲みすぎは、ほかに葉酸なども不足しますので注意が必要です。
※貧血についての説明を追記しました。(2013年8月18日)
お酒を飲むと「脳貧血」を起こすという方は、参考にしていただければと思います。