先週の木曜日、2013年2月14日付の腎臓関連の医学専門誌に
オンラインHDFは、従来の血液透析の方法に比べて、すべての原因を含めた死亡リスクを減らすという報告が出ていました。
J Am Soc Nephrol. 2013 Feb 14. [Epub ahead of print]
まとめると以下のようになります。
オンライン血液濾過透析(OL-HDF)は、標準的な血液透析に比べて死亡のリスクを減らすかもしれないと言われてきました。
実際はどうなのかということを、スペイン バルセロナのグループが調査しています。
計956人の血液透析を行っている方を対象にして、以下のように透析の方法を2群に分けています。
従来通りの血液透析を続けていく群(450人)
高効率の後希釈OL-HDFに切り替える群(456人)
多施設で共同の非盲検ランダム化比較試験を実施しました。
結果は、すべての死因による死亡率を比較することとしました。
副次的には、心血管死亡率、入院、治療の忍容性などを明らかにすることとしています。
結果ですが、血液透析を続けている群と比較して、OL-HDFは全死因で30%死亡リスクを低下させていました。
また心血管疾患では33%の死亡リスクを低下、感染症関連では55%の死亡リスクを低下させていました。
推定上は血液透析からOL-HDFに、8人切り替えることで年間死亡を1人防ぐことができる計算になるそうです。
ほかにOL-HDFは透析中の低血圧を少なくし、入院するような状況を減らすという効果もみられていました。
まとめとして、高効率後希釈OL-HDFは、従来の血液透析と比較して、すべての原因による死亡率を減らすことができると結論づけています。
約1年前の2012年1月には同じ医学専門誌に、別のグループの調査ですが、これとは少し違うニュアンスの報告が出ていました。
つまり大量置換のオンラインHDFに関してはその効果は示唆されるものの、証明するにはいたらず
生命予後や心血管疾患のリスクに関して
はっきりとオンラインHDFの優位性があるとはいえないというものでした。
Effect of online hemodiafiltration on all-cause mortality and cardiovascular outcomes.
J Am Soc Nephrol. 2012 Jun;23(6):1087-96. doi: 10.1681/ASN.2011121140. Epub 2012 Apr 26.
最初の報告のようにオンラインHDFによる生命予後の優位性がランダム化比較試験できれいに証明されたのは貴重なことだと思います。
検査結果や症状は確かにオンラインHDFで改善することが分かっていましたので
「これだけ検査も症状も良くなるのだから生命予後もきっと良くなるに違いない。
今後の研究に期待する」
という結びが常套文句のようになっていましたから。
さて、我田引水的な論理の展開は十分承知していますし、話も飛びますが
これから先をあえて伝えたいと思います。
オンラインHDFの良さを確認できたわけですが、当然ですがオンラインHDFさえしていれば良いというものではないということです。
注意していただきたいのは、どちらの調査でも1回の透析時間を4時間としていることです。
最初の報告も1回の透析の平均時間が235.8分、つまり3.93時間です。
週3回、4時間ほどの透析であるならば、オンラインHDFが勝っているのは当然だろうという印象は以前からあったものです。
けれども、それで十分とするにはどうかという問いかけや振り返りは、透析治療を継続していくうえで常に基本的な姿勢だと思います。
透析治療に関わってきた先人たちの努力は、そうやって良い治療を確立してきたのでしょうから。
その条件のオンラインHDFならば、従来通りの血液透析を長時間、頻回された方が勝っているのではないでしょうか。
改めて、オンラインHDFの利点を挙げれば
・透析液の清浄化が必須であるため、非常にきれいな透析液での血液浄化が行えるということ
・透析アミロイド症の原因となるような物質の除去に優れているため、その発症や進展の抑制効果が期待できるということ。
・脚むずむず症候群やイライラ感などの改善効果が期待されること。
・貧血の改善
・栄養状態の改善
・透析中の血圧安定が期待できること
などありますが、これらオンラインHDFの良い効果を引き出すには、オンラインHDFでの長時間透析、または頻回透析を行うことが一番であることは間違いないところです。
さくだ内科クリニックでは全員にオンラインHDFあるいは I-HD(間歇補液血液透析)を行っています。
実感として、オンラインHDFをしていて思うのは
1回1回の透析の質を和らげるのにも、オンラインHDFは良い効果をもたらすということです。
しかし、やはり長期的に生命予後に関わるのは透析時間や回数、血流量なのではないかと思っているところです。
私たち自身、もっとたくさんのことを勉強しなければならないですし
あらゆる情報に対して謙虚にならなければならないと思っています。