「自立」と「多くの人に頼ること」

短い言葉ですが、インパクトのある言葉を紹介します。

 

「自立とは、依存のことであり、より多くの人に依存することである。」

 

と言ってのけた方がいます。(「生きる技法」安冨歩著)

 

言葉のもつ意味を理解できずに素通りさせてしまう人、あるいは自分の思い込みが打ち砕かれた人

受け止め方はさまざまでしょうね。

 

自立と依存。

「依存」はどうしても「自立」とはかけはなれた言葉ですし

人の力に頼らないことが「自立」で

言い換えれば

一人で生きていくことができるということが「自立」というイメージがあります。

 

また医療者にとっては「依存」というのは「アルコール依存症」や「ギャンブル依存症」

「精神依存」や「身体依存」、また「共依存」など

精神的・身体的に深い問題を抱えているような状態を指しますから

「自立は依存すること」と言われても、納得することはできません。

 

私は「患者学のすすめ」加藤眞三さんのヒントで、少し合点がいきました。

前の文の「依存」の言葉を「他人に頼ること」に替えてみるのです。

 

「自立とは、他人に頼ることであり、より多くの人に頼ることにより得られる。」

 

この場合「より多くの人」という言葉が重要です。

 

そうすると、このときの「自立」という言葉の意味あいが少し違ってくるように思います。

 

より「自分に向き合う」ことに重きを置くことになります。

自分に向き合えば、自分が足りないこと、自分が援助して欲しいことがはっきりと認識されます。

そのときに素直に「これが欲しいのです。」「こうしてもらえませんか」と言える人は

きっと生きる力がある人でしょう。

恐らく社会で生きていくというのはそういうことのような気がします。

幅広く、多くの人に言える人ほど、生きる力が豊かであると思いませんか?

その生きる力こそが「自立」だと思います。

 

何でも一人でやってやろう、一人で生きようと自立を目指しながら

結果的に小さな社会(人間関係)に従属してしまえば

その小さな社会が全てになってしまって、典型的には一対一の依存関係に陥ってしまいます。

それでは、当事者である双方お互いが不幸な状況です。

 

実は、この関係は医療者が時に経験することなのです。

自立した患者さんというのは、一人で生きていこうとするような孤高な方ではありません。

家族をはじめ、友人、同僚、社会に囲まれて援助者をたくさん持っていらっしゃる方です。

 

私たち医療者は、患者さんがより多くの人に頼ることができるように導く

そう意識する姿勢が大切になってくると思います。

 

「自立とは、より多くの人に頼ることにより得られる。」

 

多くの人が支えあって、その人の自立を助ける。

決して特定の人と一対一にさせない。

少し考えてみたいテーマです。

 

 

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