タバコは10年の寿命を奪い、死亡リスクを3倍高める

1月24日付けの今週の『The New England Journal of Medicine』というアメリカの医学専門誌に

タバコを吸うことへのリスクについての文献が2つ出ていました。

実は、さくだ内科クリニックも、この2月から本格的に禁煙外来が開始される予定です。

その意味もあって、この2つの文献を紹介したいと思いました。

アメリカの疫学調査ですが、これはどの国にも、もちろん日本にもあてはめて考えないといけない調査報告だと思います。

まずひとつめです。


 

21世紀のアメリカにおける タバコのリスクと禁煙することの有効性 について

21st-Century Hazards of Smoking and Benefits of Cessation in the United States
N Engl J Med 2013; 368:341-350January 24, 2013DOI: 10.1056/NEJMsa1211128

この研究の背景

1980年代の研究で、アメリカでは、女性も男性も、35歳~69歳の死亡の25%はタバコを吸うことによるものだと言われていました。

今回の研究は、さまざまな年齢におけるタバコのリスク、それと禁煙のメリットを明らかにしようとしたものです。

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研究方法

1997年から2004年の間に、25歳以上の11万3千752人の女性と8万8千496人の男性から、タバコに関する聞き取り調査を行いました。

2006年12月31日までに死亡した8千236人の女性と7千479人の男性の死因について検討しています。

全くタバコを吸わない人と現在タバコを吸っている人とを純粋に比較するために、年齢、教育レベル、肥満、アルコール消費で差がついてしまわないように調整を行っています。

結果

25歳から79歳までで、現在タバコを吸っている人の死亡率は、吸わない人の約3倍でした。

タバコを吸う人の死亡の多くが、悪性腫瘍、血管系、呼吸器系、その他タバコが原因となり得る病気でした。

別の側面からいうと、25歳から79歳までのタバコを吸ったことのない人の生存確率は、現在タバコを吸っている人の約2倍でした。

(女性は70%に対して38%、男性では61%に対して26%)

タバコを吸ったことのない人に比べて、現在タバコを吸っている人の寿命は、約10年以上も短くなります

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その代わり、禁煙に成功した人は

25歳から34歳の間に禁煙に成功した人 約10年間
35歳から44歳の間に成功した人 約9年間
45歳から54歳の間に成功した人 約6年間

そのまま禁煙せずにタバコを吸い続けた人に比べて、それぞれ寿命がのびることがわかりました。

結論

タバコを吸うということは、吸わない人に比べて少なくとも10年の寿命を縮めることになります。
40歳になるまでに禁煙すれば、その死亡リスクを90%まで減らすことができます。

 


 

さて、もうひとつの文献です。


 

アメリカにおけるタバコ関連死亡の50年間の動向

50-Year Trends in Smoking-Related Mortality in the United States
N Engl J Med 2013; 368:351-364January 24, 2013DOI: 10.1056/NEJMsa1211127

この研究の背景

タバコを吸うことによる病気のリスクは、20世紀にわたって広まりました。
最初は男性からでした。遅れて女性の間に広まりました。
過去20年間にわたって、どの程度のリスクだったのでしょうか。

結果

タバコを吸ったことのない人に比べて、現在タバコを吸っている人の、肺がんによる死亡リスクは

女性が 1960年代:2.73 1980年代:12.65 現代:25.66

男性は 1960年代:12.22 1980年代:23.81 現代:24.97

 

現代の調査研究では、男性も女性もタバコを吸う人は

慢性閉塞性肺疾患(COPD)による死亡 男性25.61 女性22.35

虚血性心疾患による死亡 男性2.50 女性2.86

脳卒中による死亡 男性1.92 女性2.10

全ての死因の組み合わせで 男性2.80 女性2.76

 

男性でタバコを吸う人では、慢性閉塞性肺疾患(COPD)による死亡リスクはあらゆる年齢層で増え続けています。

タバコを吸っている期間、本数の多さに伴うことによるものです。

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55歳から74歳の男性、60歳から74歳の女性において、全ての原因を含む死亡率は

タバコを吸っている人は3倍の死亡リスクがありました。
タバコをやめるのはどの年齢においても劇的に死亡リスクを減らしていました。

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結論

タバコによる死亡のリスクは、女性の間で増加し続け、吸ったことがない人と比べて、今ではリスクの高さは男性も女性もほぼ同じです。

男性では、COPDによる死亡率はずっと増加し続けていて例外的ですが、タバコに伴うリスクは1980年代から高いレベルのままです。


 

いかがですか?

タバコを吸う人は10年間の寿命を短くし、約3倍の死亡リスクを負う。そして、タバコをやめればどの年齢でも劇的に寿命を取り戻す。

 

この疫学調査を真剣に受け止めないといけないですね。

 

 

 

 

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